死りとりゲーム


私は息を潜めていた。


ロッカーの中に身を隠し、死り神がやってくるのを待ち構える。


「こっちだ!」


廊下で賢太が叫び、すぐに教室に戻ってくるのを見ると、死り神をおびき寄せるのに成功したんだ。


賢太は教室の中央に、新田くんがその後ろで床に伏せている。


2人とも、その手には武器を持っていた。


それで死り神を仕留める。


そうすれば、ゲームはクリアできる。


元の世界に戻れば、やりたいことがあるんだ。


『ごめんね、史恵』


今にも泣きそうな顔で謝った響子は、今も責任を感じでいるはずだ。


だから、ぎゅっと抱きしめてあげたい。


友達として、抱きしめてあげたいんだ__。


「来たっ!」


そう言って、賢太がしゃがんだ。


このロッカーの隙間からは、教室全体が見渡せる。


半分ほど開いた戸を引き、黒いローブをまとった死り神が入ってきたのが見えた。


向かって左手には、ハサミを持って屈んでいる新田くん。


いつでも飛び出せるよう、前傾姿勢だ。


ターゲットである賢太は、相変わらず床に低く伏せている。


机と机の間を縫って、死り神が確実に賢太に近づいていく。


そのとき。


陽気な音が教室内に響き渡った。


電話が鳴ったんだ。


私の電話が__。





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