死りとりゲーム
少し頭が重たい。
でも、すぐに気づいた。
1分と進んでいないことに。
向こうでしりとりをしていた間、現実の世界じゃほとんど時間が進んでいないんだ。
「大丈夫か?」
近くの新田くんが、声には出さずにそう訊いてくれた。
「うん」と笑顔で頷く。
新田くんとこうしてアイコンタクトをするなんて__。
それも2人だけの秘密みたいで嬉しい。
振り返ると、響子や明香と目が合った。
意味深にうなずき合い、ちょっとした冒険をした気分になる。
すると突然。
「パンツ⁉︎」
悠馬が、大声で叫んで立ち上がる。
「なんだ棚橋、パンツの夢でも見たのか⁉︎」
社会科の先生が呆れたように言うと、教室がどっとわいた。
「可愛いパンツの夢かもよ?」と響子が口添えすると、さらに爆笑が広がる。
さすがに顔を赤らめて席につく悠馬に、私もお腹の底から笑った。
しりとりゲーム、面白いかも。
ただのしりとりじゃ、なにも楽しくないし。
学校内にあるもの、っていうのがスリルがあって楽しい。
みんなと仲良くなれるし、なにより新田くんとの距離が近くなる。
私は、もう次のしりとりゲームを心待ちにしていたんだ。