死りとりゲーム
「しりとりくらい、誰でもできるじゃない」
小馬鹿にしたように言うめぐみに、言ってやりたい。
『じゃ、代わりにやれよ』と。
「名前とかでもいいんでしょ?有名人とか」
「いや、学校にあるもんじゃないと__」
そこで私は言葉を切った。
なにか、思い出しそうだったから。
とても大事なことを、思い出しそうで__。
「めぐみ!」
その時、公園にやってきたのは新田くんだった。
肩に痛々しく包帯が巻かれているのが、服の上からでも分かる。
「人のスマホを勝手に触ったな?」
「慎也の代わりに、田辺さんに言ってあげただけよ」
「なにを__?」
「慎也は、あくまでゲームの中の田辺さんを心配してるだけだって。現実と空想は違うってこと、分かってもらったの」
ねっ、田辺さんとめぐみが微笑む。
さっきまでの、無機質で冷たい笑みは消えていた。
「田辺、大丈夫か?」
「えっ、うん」
頷く間も、頭の中を蚊が飛んでいるような感覚は消えない。
私は一体、なにを思い出そうとしてるのか?
もう少しで答えが見えそうなとき、ぐらりと足元が崩れた。
ああ、ゲームが始まる。
めぐみが参加できない、ゲームが。