死りとりゲーム


料理を作る実習台が並んでいる。


それぞれに引き出しがついており、鍋やらボールやらが収納されていて__果物ナイフや出刃包丁もあった。


私は小さな果物ナイフを手にし、台の横で身を屈める。


まだ制限時間は少しあった。


なにか言いたげな表情の新田くんと、目が合う。


私だって分かっている。


実習室の後ろには掃除用具があって、中には【モップ】もあった。それを手に取れば、まだ死りとりをクリアできるけど、そうはせずに目をそらす。


賢太は、一際大きな包丁を手に死り神を待ち構えていた。


これまで、賢太のことを一方的に責められないのはワケがある。


殺さなければ、殺される。


ひとの命を踏み潰すことを楽しんでいる様子の賢太だけど、結果的にそれで私たちは今こうして生きている。


死にたくなかったら、殺るしかないんだ__。


『タイムオーバーです』


暗くなった。


私は息を止め、死り神が来るのを待つ。


動悸が激しくなり、緊張で足元から震えが込み上げてくる。


けど、違うんだ。


私が震えているのには、ワケがある。


だって私は、死り神の正体を知っている。


小出刀賀の次に、死り神に指名されるのは1人しかいないからだ。


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