死りとりゲーム
だから私は、めぐみを殺すつもりだった。
ゲームの世界で起きることと同じことが、現実世界でも起きる。
そして、死りとりゲームのことは誰も知らない。
私が刺し殺したとしても、現実では証拠がないんだ。
私が捕まることはない。
新田くんには『知らなかった』と言えばいい。
あくまで私が殺すのは死り神であって、めぐみじゃない。
殺さなければ殺される。
正当な防衛だ。
それで、新田くんが私のものになる。
私だけのものに__。
「田辺!」
でも、いざその時が来ると、手が動かない。
こんなことなら、死り神の正体を知らないほうが良かった。
それだったら、なんの躊躇もなく刺すことができたのに。
ああ、殺される。
ひとの彼氏を奪い取るという、よからぬ欲に溺れたから、私は殺されるんだ。
「た、田辺っ!」
新田くんが飛び込んでくる。
鎌が__私の頬をかすめていく。
頬を針で刺されたように、熱を感じた。
私が感じたのはそれだけで、他に痛みはなにもない。
死り神の腕がだらんと垂れ下がり、胸に突っ込んだ新田くんがそれを支えるように、2人は抱き合っているように見えた。
恋人同士が、抱きしめ合っているように。