死りとりゲーム
誰もいない廊下を歩く。
校内は静まり返っていた。
まるで、この世に私ひとりしか存在していないように。
いや、どこかに死り神がいる。
殺しても殺しても、名前の死りとりによって湧いてくる死り神が、どこかに身を潜めているんだ。
もし私が失格となれば、その首を刈り取りにくる。
まぁ、今回ばかりは失敗はない。
なぜなら、私はもう【は】から始まる物を見つけたから。
たどり着いたのは【家庭科室】だった。
編み物をしたり、ミシンをしたり、私は裁縫が得意だ。
どんな単純作業も、好きなひとのことを考えながらやれば苦にならない。
いつも、新田くんのことを思い浮かべて手先を動かしていた。
新田くん。
私がまだゲームをしてるって言ったら、怒るかな?
そう、私は『退会』しなかった。
ゲームを退会したのは、賢太だ。
【誰が退会しますか?】という項目が表示されたとき、私はしばらく考えて【賢太】を選んだ。
自分が退会すれば、2度とゲームに関わることはなかったのに。
賢太は放っておいても、最後の1人なんだから楽にゲームをクリアする。
それでも私が退会しなかったのは、この手でゲームを終わらせたかったからだ。
この、死りとりゲームを。