死りとりゲーム


えっ?コップ?


コマじゃなかったの?


私だけじゃなく、みんなが一瞬、息をのんで押し黙った。


『クリアです』というアナウンスも、耳から耳へと抜けていく。


「てめぇ、裏切りやがったな!」


悠馬が、賢太の胸ぐらを掴んでぎりぎりと締め上げる。


わざとだ。


いつもイジメられている悠馬に仕返ししようと、賢太はコマじゃなく、コップを隠し持っていたんだ。


『それでは【ぷ】から始まるものを見つけて下さい』


「ぷ?」


思わず呟いてしまった。


【ふ】でも【ぶ】でもだめで【ぷ】がつくもの__?


それって、意外と難しくない?


たぶん賢太は考えに考え抜いて、あえて難しい言葉を選んだんだ。


「てめぇ、よくも俺を騙したな?」


馬鹿にされるのが何より嫌いな悠馬の怒りは、おさまりそうにない。


首を締め付けられ、顔が真っ赤になっていく賢太。


「い、いいのかな?じ、時間が減ってくけど?」と、悠馬を挑発している。


「てめぇ、許さねーからな!」


そう言って悠馬が、突き飛ばすように賢太の胸ぐらを離した。


そのまま後ろに倒れた賢太はそれでも、ニヤついている。


だって【ぷ】のつくものなんて、思いつかない。


悠馬は失格になるんじゃ?


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