死りとりゲーム


とんでもない速さで、悠馬が廊下を駆けていく。


それもそうか、もう時間は1分くらいしかない。


おそらく、なにか【ぷ】のつくものを思いついたのだろう、私たちは後を追いかけるだけで精一杯だった。


前を行く新田くんが、校舎から飛び出していく。


えっ、外なの?


「ちょっと、もうだめ!」


振り返ると、響子はその場にへたり込んでいる。


「行こう!」と明香は私を追い抜いていった。そういえば、次は明香の番だ。すぐに自分の順番がくるから、離れるわけにはいかないんだ。


上履きのまま、校庭を走る。


もう前の2人は見えなくなっていて、胸が苦しくなるのを我慢して、私たちは【そこ】にやってきた。


夏休みが終わり、秋の気配がどんどんと近づいてくる今、使われなくなったもの__。


「プールだ!」


そう声を張り上げたかと思うと、悠馬はなんとプールに飛び込んだ。


水しぶきが派手に飛び散る。


「うーっ、冷てぇー!」


顔を出した悠馬は、これ見よがしに笑っていた。


『クリアです』


勝者の笑みだ。


「やったな!」と新田くんも喜んでいて__さっき新田くんは「頭を冷やせ」って悠馬に言った。それって、プールのことを伝えるためじゃ?


悠馬はしばらく泳いでいたけど、やっぱり寒いのかプールから上がった。


清々しい表情の悠馬と、プールに入ってもいないのに小刻みに震えている賢太。


「てめぇ、覚悟しとけよ」


ドスを効かせた声に、聞いてる私でさえ震え上がった。


悠馬が勝ったんだ。


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