死りとりゲーム


「ねぇ、なんか思いついた?」


こっそりと響子が尋ねてくる。


机の引き出しを漁ったり、ロッカーを荒らしている明香を見つめながら、私は首を振った。


【る】から始まるものが、なにも思いつかない。


それは他のみんなも同じらしく、一様に首を傾げている。


ということは__?


もしこれから前の参加者が【る】で終われば、ピンチが訪れる。


逆に【る】で終わらせれば、次の参加者をピンチに陥(おとしい)れることができる。


【る】に限らず、濁点があるものは見つかりにくいかもしれない。


「もう1分しかない」


スマホで残り時間を確認した明香が、諦め気味に呟いた。


もう探すのをやめたのか、じっとスマホを見ている。


時間が減っていくだけなのに__?


なにか考え込んでいる様子だ。


まさか、スマホを使って調べるとか?


【る】と打ち込んで予測変換すれば、いくつか文字が出てくるはずだ。


でも、そんなことをすればバレるだろう。


それなのに明香は、スマホになにか打ち込み始めた。


そして耳に当てる。


「電話?」


響子も不信に思ったのか、眉をひそめる。


そんな私たちの反応もお構いなしで、真剣な表情で誰かに電話をかけている明香。


耳からスマホを離すと、スピーカーを押す。


すぐに電話がつながった。


< 40 / 261 >

この作品をシェア

pagetop