俺様課長のお気に入り
土曜日。

「よし、お弁当もできた。そろそろ要君が来るかなあ」

要君のことを思い浮かべたその時、ちょうどスマホがなった。

「もしもし」

「陽菜、着いたぞ」

「はあい。すぐ出るね」

電話を切って、急いで靴を履いた。

「ケイ君、行くよ!」

今日は、要君が紅葉の綺麗な公園に車で連れて行ってくれることになっている。
久しぶりのお出かけに、心が躍る。
1秒でも早く要君に会いたくて、駆け足で外に出た。

「要君、おはよう。おじゃまします」

「おう。ケイ、久しぶりだな。今日はいっぱい遊ぼうな」

「ワン!」

ケイ君をフラットにされた後部座席に乗せて、私たちも乗り込んだ。

「陽菜、シートベルトを忘れてるぞ」

そう言って、要君は腕を伸ばして私のシートベルトを締めながら、触れるだけのキスをした。

「か、要君!?」

「ははは。陽菜、真っ赤になってるぞ」

「だって、要君が!!」

「よし、行くぞ」


両思いになってから、要君はこれまで以上にあまい。
というか、スキンシップが格段に増えて、恋愛初心者の私としては、いつもあたふたさせられている。



要君が連れてきてくれたのは、敷地内にプールまであるような大きな公園だった。

「こんな大きな公園があったなんて、知らなかった。要君って、犬用の車のシートを持ってたり、いろんな公園を知ってたり、すごいね!!」

「……そんなの、お前達のために用意したり、調べたりしたに決まってるだろ」

ん?
気のせいか、要君の耳が赤いぞ。

「要君、照れてる?」

「うるさいぞ、陽菜。ほらケイ、行くぞ」

「ワンワン!」

「あっ、待ってよ」

「ほら、陽菜も」

そう言って差し出された要君の手に、私は迷うことなく自分の手を重ねた。
誰にも遠慮することなく、こうして要君と堂々と手をつなげることが、嬉しくて仕方がない。

「要君、やっぱり要君も一緒だと楽しいよ。連れてきてくれて、ありがとう」

「ああ。これからも一緒に、いろんな所に連れて行ってやるよ」

「うん!ケイ君、たくさん遊んでもらおうね」

「ワン!」



ほんの数日前、あれほど悩んでいたのが嘘のようだ。

「陽菜、この1ヶ月間は、俺も陽菜不足でどうかなりそうだったんだぞ。これからどんどん満たしてもらうからな」

不敵な表情で言い放った要君。
私には、レベルが高すぎそうなんですが……

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