俺様課長のお気に入り
12月に入ったすぐの土曜日。
要君は、金曜の夜からうちに泊まっていた。

朝からずっと雨が降っていて、外に行くことを諦めて、家でのんびりDVDを観て過ごすことにした。

「ケイ君、散歩に行けなくて残念だね」

「この雨だ。賢いケイのことだから、無理だって察して納得してるさ」

まあ、その通りだ。
ケイ君も、朝からずっと私達の足元に寝そべったままだ。



ーピンポーンー


まったりしていた時、玄関のチャイムがなった。

「誰だろう?」

宅急便?
なんか来る予定あったかなあ……
来訪者が誰なのかを予想しながら、モニターを見ると……

「げっ……翔君!?」

〝翔君〟と聞いて、ケイ君が体を起こして尻尾を振りだした。

「翔君?」

訝しげな要君の表情も、今の私には目に入らない。

「どうしよう……要君が殺されちゃうかも……」

真っ青になる私。

「はあ?どういう意味だ?
まさか、陽菜。他に親しい男がいるのか!?」

すごい勢いで要君が近づいてきて、モニターを覗く。
そこに映し出された翔君の姿を見て、要君は眉間にしわを寄せた。

「陽菜、まさかお前、本当に……」

「ち、違うよ要君。翔君は私の兄なの!!」

要君の勘違いに気づいて、慌てて説明した。

「はっ?」

要君が、気の抜けた声を出した。

「どうしよう……前から言ってたでしょ?翔君、重度のシスコンなの。要君が危ない」

そうしている間に、もう一度チャイムがなった。
それからスマホも……

「も、もしもし?」

「陽菜か?マンションにいるんだろ?
真美から岩崎ってやつのことを聞いた。話があるから、今すぐ開けなさい!!」

「か、翔君。一旦落ち着こう」

「これが落ち着いていられるか!!とにかく、今すぐ開けなさい!!」

とにかく、めちくちゃ起こっていることはわかった。

「陽菜。お兄さんなんだろ?大丈夫だ。開けて」

「おい、陽菜。今男の声がしたぞ。そこに岩崎ってやつもいるのか?早く開けなさい!」

「わ、わかったから。翔君、お願いだから落ち着いてね」


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