俺様課長のお気に入り
「陽菜ちゃん、本当に幸せそうでよかったわ」

真美さんの表情に、ずいぶん心配をかけてしまったことがわかる。

「真美さん……素直になるのって、すごく難しかったけど、自分の気持ちに蓋をしなくてよかった。今のこの幸せは、真美さんのアドバイスのおかげだね」

「もう、陽菜ちゃんったら、どこまでもかわいいんだから」

そう言って、真美さんは私を優しく抱きしめてくれた。




「ところで、陽菜ちゃん」

直前までのほんわかムードとは打って変わって、なにやら不穏な空気を醸し出してきた。

「私の見たところによると……岩崎さんは、翔以上の溺愛ぶりを発揮するタイプね」

「えっ?まっさかあ」

笑い飛ばそうとする私の肩を、真美さんはガシッと掴んだ。

「だって、陽菜ちゃんが意識する、ずっと前から婚姻届を用意してたんでしょ?それに、陽菜ちゃんは気付いていないかもしれないけど、彼の陽菜ちゃんを見るあの目。もう、かわいくて仕方がないって感じ。間違いなく、翔以上ね」

なんだか、怖いことを言われてる気もしなくはないけど、そんなことを言われると嬉しさが勝って、おもわず口元が緩む。

「これは陽菜ちゃん、苦労するかもねぇ……まあ、陽菜ちゃんは翔で慣れてるから、大丈夫かもしれないけどね」

「えっ……く、苦労って……」

思わぬ言葉に、わけがわからなくなる。

「とにかく、陽菜ちゃんは自分が思っている以上に、彼に愛されてるってことよ。安心して結婚できるわね」

な、なんか、喜んでいいのかどうか……





「また遊びに来なさいね」

家族に見送られながら、実家を後にした。
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