俺様課長のお気に入り
その晩。
ケイ君が、翔君のところにお泊まりに行っていたから、要君のマンションへ行くことにした。
一緒に買い出しをして、私の作った夕飯を食べてゆっくり過ごしていた。

夕飯まではよかった……
そこからとにかく緊張しちゃって……
もうどうにかなりそうだった。


お風呂に入る頃には、もうどこに目を向けていたらいいのやら、軽くパニックだ。
その後のことを考えると、顔が熱くなってくる。

先にお風呂に入って待っているなんて、高レベルなことは私にはできそうになくて、要君に先に入ってもらった。
続いて私も浴室に向かい、時間をかけてゆっくり入った。

化粧水をつけたり、髪を乾かしたり、緊張をごまかすためにしていたネタはもう尽きた。
いい加減、覚悟決めて要君の元に行かないと、呆れられちゃうかも……
そう思いながらもじもじしていると、要君の方からやってきた。

「ひーな。待たせすぎだぞ」

後ろから要君に抱きつかれて、心臓がますます暴れ出す。

「ご、ごめん」

「緊張してるんだろ?」

「う、うん。待たせすぎて怒ってない?」

「怒るわけないだろ。それにほら、俺も緊張してるぞ。やっと好きな女を抱けるんだから」

そう言って触れさせてくれた要君の心臓も、私と同じでリズムが速かった。

「おいで、陽菜」

要君は私を引き寄せると、ひょいと横抱きにした。

「か、要君!?」

「いいから。俺の首につかまってな」

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