俺様課長のお気に入り
子どもはいつできてもいいねって話していたけど、実際に妊娠したと言われて、とにかく嬉しかった。

病院からの帰り道、要君はいつも通り手を繋いでいてくれる。

「要君、赤ちゃんだって。なんか、まだ全然実感がわかないんだけど、とにかくすごく嬉しいよ」

「ああ。俺も嬉しい」

ん?
要君が喜んでくれてるのは、間違いないと思うけど……
あれ?
何か考えごとしてる?

「陽菜。転ぶと危ないから、ちゃんと前を見ろ」

チラチラと要君を見ていたのに気付いていたようだ。
要君、何を考えているんだろう……



帰宅して、まずケイ君に妊娠を報告した。
どこまで理解しているかはわからないけど、私の報告を、尻尾を振りながら聞いてくれた。

「お互いの実家にも、報告しないとね」

「そうだな」

なんか引っかかるなあ……

「要君、なんか悩んでる?さっきから考えごとしてるように見えるけど?」

「え?あ、ああ……」

珍しく要君が口ごもる。

「何?何かあるの?」

逃がさないという意思を伝えるように、要君の手をガシッと掴んで聞いた。
要君は観念したのか、重い口を開いた。

「まあ、心配事が増えたんだよ。陽菜をこのまま働かせていいのかとか……」

「とか?」

「…………陽菜を、独占できなくなるとか……」

「はっ?」

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