俺様課長のお気に入り
それから金曜日まで、岩崎さんと駅で遭遇することはなかった。
けど、食堂や廊下で出くわした時には、散々ちびっ子いじりをされた。
なんとか爆発することなく、一週間乗り切れた自分を褒めてあげたい。

金曜日の夕方、やっと週末だと嬉しいやら憂鬱やらよくわからない状態で、ふらふらっと廊下を歩いていると、同期の坂田君とすれ違った。

「おう、陽菜。おつかれ」

「ああ、坂田君。おつかれさま」

「あのさあ……」

珍しく坂田君が言い淀んだ。

「ん?」

「噂で聞いたんだけど……営業の岩崎さんとケイ君ってやつと、陽菜の3人で会うって本当か?」

「会う?会うっていうか……遊びに行くことになってしまったというか……」

「大丈夫なのか?3人でなんて」

「大丈夫……なのかな?」

「なんなら、俺も行って仲裁しようか?」

「えっ?いいよ、そんな休日に。私にはケイ君がついていてくれるから、何も心配ないよ」

「そ、そうか。何か困ったことがあったら、俺に言えよ」

「うん?よくわかんないけど……うん。困ったことがあったら、相談させてね」

「おう。いつでもいいぞ」

「ありがとう。じゃあね」




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