俺様課長のお気に入り
「おっ、来たな陽菜。ケイ、一週間ぶりだな」

「ワン!」

「ちょっ、ちょっ、ケイ君!わあ……」

岩崎さんを見つけた途端、心底嬉しそうに駆け出したケイ君。
そんなケイ君の熱烈な想いを、岩崎さんも受け止める。

「よしよし、ケイ。そんなに俺に会えて嬉しいか?犬は素直でいいな。
ほら、陽菜はこっち」

って、右手でケイ君を撫でながら、左手を差し出してきた。
こ、これは私もよしよしされるってことか??

「いきませんよ」

「なんだ、素直じゃないな。まあいいや。
陽菜、座って。ランチを頼もう」

私に自分の前の椅子を指し示して、メニューを広げた。

「岩崎さんは何にするんですか?」

「はあ、陽菜……」

なんだ?盛大にため息をつかれたぞ。

「俺はちび子のことを百歩譲って、本名の陽菜って呼んでるんだぞ。なのにお前ってやつは……〝岩崎さん〟はないだろう。もっと親しみを込めて呼べよ。なあ、ケイもそう思うだろ?」

「ワン!!」

名前を呼ばれて反応したケイ君。

「ケイ君!私の味方でいてねって言ったのに……」

「ほらな。ケイも俺の意見に賛成してるぞ」

「くぅ……じゃ、じやあ……岩崎君?」

「わかってないなあ。お前、俺の名前知ってるだろ?」

「知ってますよ。岩崎要さんでしょ」

「おっ、ちゃんと知ってるなら、ほら、親しみを込めて呼んでみろ」

ど、どうする?
この俺様男、何が何でも名前呼びさせる気だな。

「か、か、か、」

「俺は血を吸う虫じゃないぞ」


「要君!!」


思いっきり息を吸い込んで言ってやった。
ふふん、翔君で名前呼びは慣れてるんだからね。
ちょっと気合を入れれば、この意地悪男だって名前で呼べるわ!!
< 36 / 137 >

この作品をシェア

pagetop