俺様課長のお気に入り
びっくりさせられたかしら?と、チラッと見ると……

失礼男の耳がほんのり赤くなってないか!?


「くは、そうきたか。せいぜい〝さん〟付かと思ってたわ。
いいよ、気に入った。会社以外ではそう呼ばせてやるよ」

「やるよって……半分冗談なんだけど。
しかも、君呼びするような年齢じゃあ……」

翔君もだけど……

「なんだと?ごちゃごちゃうるさいぞ!これは決定事項だ。
さっさとランチを選ぶぞ」

勝手に決めて、メニューに話を戻したぞ。
なんて暴君なんだ……

「私は……クラブハウスサンドと、コーヒーにします。要君は?」

ふん。しれっと呼んでやったぞ!!

「俺は、ミックスサンドとコーヒーだな。陽菜、半分ずつ交換するぞ」

「なっ、勝手に決めて、図々しいですよ」

「いいじゃないか。一粒で二度美味しいってことで」

この俺様は、一度言い出したことは変えないって、ここ数日で学んだ私は潔く従うことにした。

「はあ。わかりましたよ。ケイ君は犬用のランチね」



「それにしても、ケイはやっぱり賢いなあ。陽菜、週末はいつもケイの散歩やお世話に明け暮れてるの?」

「明け暮れてるって……でも、はい。だいたいそうです。平日に来てくれていた義姉さんの妊娠がわかって、散歩中に何かあってもいけないからって、来られなくなったんです。だからますます、週末ぐらいは連れ出してあげたいし」

「くくく。もともと男っ気がなさそうなのに、さらになくなるな」

「失礼な……でもいいんです。私にはケイ君がいてくれるから」

「ケイ……」

要君が不意に、ケイ君に憐れみの目を向けた。

「かわいそうな飼い主だな。
仕方がないから暇な週末は俺も付き合ってやるよ」

「ワン!!」
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