俺様課長のお気に入り
翌火曜日。

会社の最寄駅で電車を降りたら、要君に出くわした。

「おっ、陽菜。おはよう。相変わらず早いな」

「あっ、おはようございます。私はいつもこの時間なんですよ。
要君は、今朝はなんでこんなに早いんですか?」

「ん?明日から出張になったから、ちょっと仕事を片付けておこうと思って」

「そうですか。営業って、出張が多いですね。大変そう」

「まあ、慣れだな。
そうだ、陽菜。今度の日曜日はあいてるか?」

「はい。ケイ君とお散歩するぐらいです」

「よし。俺、金曜日に帰って、土曜日は仕事をする予定なんだ。だから日曜日はあくから、また一緒に出かけるぞ」

「はあい」

「おぉ。やけに素直じゃん」

「だって、要君がこうと決めたら絶対実行するって、この数日で学びましたから。反論するだけ無駄です。
それに、ケイ君も〝要君が……〟って話すと、尻尾を振って嬉しそうにしてるんです。2対1なんです。悔しいけど」

「ははは。ケイはいいやつだな。
じゃあ陽菜にはお土産を買ってきてやるからな。いい子で待ってろよ」

「もう、また子ども扱いして」

「それじゃあな」

そっかあ。
要君は出張で、明日から金曜日まで会社にいないんだ。
ん?ちょっと待てよ。
今私、なんかがっかりしてないか?

いやいや、がっかりする要素はないぞ。
気のせいだ。


よし、今日も頑張るぞ!!


なんとなく言い聞かせるような、それとも無理矢理のような、変な気合いになってしまった。




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