俺様課長のお気に入り
日曜日。

いつも通りの時間に起きて、お弁当を作った。
昨日、下準備をしておいたおかげで、短時間で完成した。


「うん。唐揚げもおいしい。
ケイ君、ケイ君のランチもちゃんと待って行くからね」

「ワン!」



公園に行くって言ってたから、動きやすい服装にしよう。
まあ、ケイ君と出かける時は、必然的にカジュアルになるんだけど。
ああだこうだしながら、デニムにパーカーという、いかにもお散歩仕様の服装に決めた。



準備をすませて少しした頃、スマホがなった。


「陽菜、着いたぞ」

「はあい。今出ます」


車のことは詳しくないけど……要君の車は大きくて、アウトドアにむいてそうなものだった。
ケイ君も余裕で乗れそうだ。

後部座席をフラットにして、動物を乗せる時専用なのか、ビニール素材のシートが貼られていた。

「おじゃまします」

要君の指示に従ってケイ君を乗せ、自分は助手席に乗り込んだ。

「陽菜、シートベルトはしたか?」

「うん」

「じゃあ出発するぞ」


要君の運転はすごく滑らかで、いつもの俺様ぶりからは想像できないものだった。
あまり車に乗ることのないケイ君も、不安がることなくすごしていた。

「陽菜、今日は公園に行って、ケイをおもいっきり遊ばせてやろう」

「はい。どれぐらいで着くんですか?」

「1時間ぐらいかな」

「了解です」

「あっ、そうだ。陽菜、これやるわ」

そう言って、要君はポケットから紙袋を取り出した。

「出張のみやげだ」

「ありがとう。なんだろう……うわぁ、きれい!!」

要君がくれたのは、シルバーの羽型のブックマーカーだった。

「この前電話で聞いたのは、これだったんですね?」

「ああ」

「大事にしますね」

すごくきれいなブックマーカーで、一目で気に入った。

「たくさん勉強するんだぞ」

「またちびっ子扱いですか……」

「ははは。むくれるな。陽菜ってインドア派っぽいから、本を読んでそうだなあって思ったの」

「よくわかりましたね。その通りです。真美さんが来るたびに読み終わった本を置いていってくれてたので」

「なら、ちょうどよかった」


それから、ケイ君のことや仕事のことなんか、とりとめのない話をしていたら、あっという間に目的地の公園に着いた。



< 52 / 137 >

この作品をシェア

pagetop