俺様課長のお気に入り
広い公園を、手を握られたまま散歩した。

途中でクレープ屋さんを発見して、思わずテンションが上がってしまった私。
あまりにも物欲しそうに見ていたようで……

「買ってやるよ」

「いやでも……」

「遠慮するな。らしくない」

「ありがとう」



「ほら」

ほかほかのクレープには、たっぷりの生クリームと、チョコとアーモンドがのっていた。
めちゃくちゃおいしそう。

「おいしいか?」

「うん!」

「そうか。じゃあ、俺にも味見させて」

要君は横から強引に、私の持っていたクレープを食べた。

「あまいな」

えっ……と、今、私の食べかけを食べたよね?
こういうの平気な人なのか?

軽くパニックになっている私を気にもせず、要君はまたゆっくりと歩き出した。
とりあえず、食べておこう。



「もう4時か。そろそろ帰るか」

「そうだね」

クレープを食べ終わって、再び繋がれていた手は、車に戻ると何事もなかったかのように離れた。
なんか……急に寒くなった気がした。

後部座席にケイ君を乗せて、自分たちも乗り込むと、朝来た道を戻っていく。




「要君、今日はありがとう」

自宅マンションの前でケイ君と荷物を降ろして、改めて要君にお礼を言った。

「楽しかったか?」

「うん!!」

「じゃあ、また連れて行ってやるよ」

要君は、微笑みながらふんわりと私の頭を撫でた。
そして、そのまま顔を近づけてきて、私の髪にそっとキスをした。

「じゃあな、陽菜。ケイもまたな」

手をひらひらさせながら、車に乗り込んで去っていった。



い、今、何をした!?
キスしたよね!?


1人パニックになった私は、しばらくその場を動けなかった。


「ケイ君、これはいったい、どういうことなんだろう……?
なんで要君は、私の髪にキスをしたのかなあ?
なんで私は、今日一日、よくドキドキしてたんだろう……?」

ケイ君は、「ん?どうしたの?」と言うような、少しだけ心配そうな顔をしていた。

「んーわかんない。
もういいや。ケイ君、さっさとご飯を食べて寝よう」

部屋に戻って早く寝る準備をしたんだけど、今日のことを思い出しては悶々として、なかなか寝付けなかった。






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