俺様課長のお気に入り
月曜日。
少し眠いのをこらえながら、いつも通りに起きて出勤した。


「陽菜ちゃんおはよう」

「おはようございます」

「あれれ、陽菜ちゃんどうしたの?なんか冴えない顔してるわね」

「夏美先輩、私……よくわからないんです」

「何が?」

「うーん……」

「よし、今日のランチもミーティングね」

「はい……」





「で、陽菜ちゃんを、そんなに悩んだ顔させてる原因は何?」

今日のランチは、夏美先輩に誘われて会社近くの定食屋さんに来ていた。

「えっとですね、昨日のことなんですけど……
また岩崎しんとケイ君とで出かけたんですけど……」

そこで、〝かわいい〟って言われて、でもそれはケイ君と同列のようだったこととか、膝枕のこと、帰り際に髪にキスされたことなんかを話した。

「なるほど……岩崎さん、やっぱり本気のようね」

「何か言いました?」

「なんでもないわ。それで、陽菜ちゃんはそういうことをどう思ったの?」

「うーん、なんかよくドキドキしました。でも、岩崎さんの言動はケイ君に対するものと変わらないというか……私もペットみたいなものかなって思いました。からかいの延長なのかなあ」

「そう思っちゃったかあ……まあ、仕方ないかも。で、陽菜ちゃんは、岩崎さんとまた出かけたいって思った?」

「それは思いました。普通に楽しかったし、ケイ君も終始はしゃいじやうぐらい楽しそうだったので」

「そっかあ。じゃあさ、楽しいと思えたのなら、そんなに悩まなくてもいいんじゃない?岩崎さんの言動は、彼なりの愛情表現なのよ」

「愛情表現……私がケイ君の首に抱きついたり、毛にもふもふしたりするのと同じなのかなあ……
うん。そっか。先輩に話して、なんかすっきりしました」

「あはは……どういたしまして。
これは岩崎さん、かなり苦戦しそうだわ」

先輩に話したことで、なんだか心が軽くなった。
そのおかげで、午後からの仕事は、午前より少しだけ捗った。


そっか。要君にとって、私もケイ君と同じで、ペットみたいなかわいいやつだったんだ。


……でも……ん?
なんだかちょっとだけもやもやする。

元からくよくよ悩まない私だったけど、このことがなんとなく心の片隅にこびりついたままになっていた。


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