俺様課長のお気に入り
その週の木曜日の夜のこと。
自他のリビングでくつろいでいると、要君から電話がかかってきた。

「もしもし」

「陽菜、この前はうまい弁当をありがとう」

「どういたしまして。私も、公園に連れて行ってくれてありがとう」

「ああ。ところで、今度の土曜日ってあいてるか?」

「いつも通り、あいてるけど」

「ははは。じゃあ、ペット連れで行けるカフェを見つけたから行くぞ。そこ、オーナーがケイと同じゴールデンを飼っていて、その辺りでは有名な子らしいぞ」

「本当?それは会ってみたい!!ケイ君も喜びそう」

「じゃあ、また車で行くから。そうだなあ……11時頃に迎えに行くわ」

「はあい。お願いします」

要君と休日に会う、新しい約束をした。
なんだか、わくわくする。

「ケイ君、土曜日に要君がカフェに連れて行ってくれるんだって。でね、そのお店にケイ君と同じゴールデンレトリーバーがいるんだって。どんな子か会うのが楽しみだね!」

「ワン!!」



〝要君と約束〟

その威力は、いつのまにか私の中で大きくなっていた。
翌、金曜日の仕事はさくさく進むし、気づけば帰宅後の恒例行事になっていた、ケイ君に癒されタイムも必要ないぐらい元気だった。
まあ私の愚痴ばかり聞かされるケイ君も、たまったものじゃなかっただろうから、いい傾向だ。

「ケイ君、明日は要君とお出かけだね。楽しみだね」

「ワンワン!!」


気付けば、要君のお誘いに〝げっ〟とか〝嫌だなあ〟とは思わなくなっている。
それどころか、すごく楽しみになっている。
おかしいなあ……少し前までは、失礼で天敵だとまで思っていたのに……



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