俺様課長のお気に入り

涙の週末

月曜日。
また一週間が始まった。

通常業務をこなしていると、夏美先輩に声をかけられた。

「陽菜ちゃん急なんだけど、今日から営業課に異動してくる人がいるの。えっと……あっ、そうそう。星野静さんね」

「ああ。聞きました。本当に急な話ですよね」

「まあ、もともと人手が足らなかったからね。なんでも、役員の誰か親族だとかって話よ」

「へえ」

「それでね、今急いで必要な書類を用意してるから、準備ができたら届けてくれる？」

「あっ、はい。わかりました」





午後になって、星野さんの書類を届けに向かった。


「すみません」

「はい。あら陽菜ちゃん」

私を見ると、いつも笑顔で迎えてくれる山川さんが、なんだか気まずそうな顔をした。

「山川さん？どうかしました？」

「なんでもないわよ」

「そうですか。あの、今日からいらっしゃってる星野さんに書類を届けに来たんですけど」

「星野さんね。星野さんなら……ほらあそこに」

山川さんが示した先に目をやると、背の高い美人さんがいた。
その横に……要君？
職場なんだからいてあたりまえだ。
普通に話してるだけなんだろうけど……珍しく要君が笑っている。

「すごく……綺麗な人ですね」

「……そうね」

ああ、そうか。
山川さんは、夏美先輩から私と要君のこととか、私の気持ちを聞いて知ってるんだった。
だから気まずそうだったのかな？
要君は普段、女子社員に冷たいって言ってたもんね。



要君と星野さんの話が終わったようなので、山川さんが星野さんを呼んでくれた。

「総務課の滝本です。必要な書類を届けに来ました」

「ああ。ありがとう」

「今週中に提出をお願いします」

「わかりました」

星野さんは、いかにも仕事ができる人って感じだった。
なんとなくざわつく胸を押さえながら、総務課へ戻った。