俺様課長のお気に入り
「ケイ君。最近、要君に会えなくてさみしいね」

「クゥーン」

ケイ君も、どことなくさみしげな表情をしていた。


ぼーっとしていたら、スマホの着信音がなった。
坂田君からだ。


「もしもし」

「もしもし。陽菜?今、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

「あのさ、この前言ってた、ケイ君に会わせて欲しいってのだけど、明日ってどう?」

「明日は土曜日かあ……」

特に予定はない。

「いいよ」

「じゃあさ、陽菜の家の最寄駅にあるペット可のカフェで待ち合わせでどう?
そこでランチして、その後は少し行った所にある南公園でケイ君と遊ばせてよ。大きな公園なんだろ?楽しめそうじゃん」

「ああ。その公園ならよく遊びに行くよ。広くてケイ君もお気に入りなの」

「それはよかった。じゃあ、カフェで12時ぐらいにな」

「わかった」

「それじゃあ、明日」

そう言って、電話は切れた。

「ケイ君、明日ね、同じ職場の坂田君っていう人がケイ君に会いたいんだって。一緒にご飯を食べて、それから公園で遊んでもらおうね」

「ワン!」




翌日、ケイ君にカバンを背負わせて、待ち合わせのカフェに向かった。
ここは、休日にケイ君とたまに来るお店だ。

「いらっしゃいませ」

「あの、待ち合わせをしているんですが……」

と、キョロキョロしていたら、先に座っていた坂田君に呼ばれた。

「陽菜、こっちだよ」

店員さんに頭を下げて、手を振る坂田君の元へ向かう。

「お待たせ。坂田君、この子がケイ君だよ。ケイ君、坂田君だよ」

「ケイ君かあ。かわいいなあ。よろしく」

坂田君はそう言って、頭を撫でた。
ケイ君は、ますます尻尾を振った。

「じゃあ、注文しようか」

なんか……岩崎さんと出かけた週末が重なる。
ううん。
今は坂田君と出かけてるだから、他の人のことを考えるなんて失礼だ。

私達は、ケイ君と自分達の分を注文した。

「それにしても、ケイ君は本当に賢そうだな」

「そうでしょ?けっこういろいろな芸ができるんだよ」

「すごいなあ。ケイ君、後で見せてよ」

坂田君にケイ君のことを褒められると、悪い気はしない。

「陽菜が溺愛するのもわかる気がする」

「へへへ。だってもう、かわいくて仕方がないから」

「いいなあ、ケイ君は陽菜にそこまで思われて」

「ケイ君は家族だから」



「お待たせしました」

運ばれてきた料理を食べながら、仕事のことやケイ君のことを話していた。
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