俺様課長のお気に入り

「さて、食べ終わったし、公園に移動するか？」

坂田君にそう言われてふと顔を上げると、窓の外に見知った人がいた。

「えっ……」

私のつぶやきに、坂田君も外を見た。

「岩崎さんと星野さん？
な、何してるんだろうね？休日に2人で……」

「……陽菜」

「あっ、プライベートなお出かけかな。お似合いだもんね」

「陽菜！」

私今きっと、泣きそうな顔をしていると思う。
俯いたまま、動けないでいた。

「陽菜、大丈夫か？とりあえず、場所を変えよう」

そう言って、もともと行く予定だった南公園に移動した。


私をベンチに座らせると、坂田君は温かいココアを渡してくれた。

「陽菜、大丈夫か？」

「う、うん」

「陽菜……やっぱり、岩崎さんと付き合ってたのか？あの人最近、星野さんと組むようになって、常に一緒にいる感じだ。もともと知り合いだったみたいだし。岩崎さんも星野さんには笑顔を向けることがあるし、気を許してるようだけど」

坂田君はその先を、話すかどうか迷っていたみたいだけど、再び口を開いた。

「陽菜、あくまで噂なんだけど……岩崎さんと星野さん、付き合ってるみたいだぞ」

ズキっと胸が痛んだ。
付き合ってるんだ……
そっか。やっぱり私は、要君にとってケイ君と同じでペットのような存在でしかなかったんだ。

「やっぱり、星野さんは美人だし、役員の血縁者となれば将来の出世につながるかもしれないもんな」

「……っ……」

「陽菜、泣かないで」

坂田君は、言葉なく涙を流す私を抱きしめて、背中を撫で続けた。


「ごめ、ごめん。坂田君」

「陽菜、本当は岩崎さんと付き合ってたんじゃないのか？」

「付き合ってなんかないよ。ただ、私が一方的に好きになっちゃっただけ。岩崎さんは、本当によくケイ君をかわいがってくれて、そのついでに私も同じようにかわいがってくれてただけなの。だから、岩崎さんが誰とどこで何をしていようと、それをどうこう言う権利は……私にはない」

「陽菜……」

また涙がこみ上げてきた。
坂田君は、もう一度優しく抱きしめて、私が落ち着くのを待ってくれた。

「坂田君、ごめんね。せっかくケイ君に会いに、ここまで来てくれたのに。つまらないよね。ごめんね」