俺様課長のお気に入り
翌日も、ケイ君によって朝早くに起こされた。

なんか最近……会社に行きたくない。
要君には会いたいのに、星野さんといる姿を見ちゃうと胸が苦しくなる。
いっそ会わないようにって避けても、要君のことをいつも考えちゃうし。
それに、坂田君と会えば、ちゃんとさせなきゃって焦ってしまう。
どうしたらいいんだろう……


いくら気が重くても、大人なんだから理由もなく会社を休むことなんてできない。
重い腰を上げて、会社に向かった。


会社では、ただ淡々と仕事をこなしていく。
他のことを考える暇がないよう、いろんな人の手伝いを自ら引き受けて、手を休めないように働いた。

「陽菜ちゃん、仕事を詰め込みすぎよ」

夏美先輩も、ずっと私を心配し続けていて、申し訳ない。
でも……

「仕事をしてると、いろいろなことを考えずにいられるので、心が楽なんです」

「陽菜ちゃん……
もう、岩崎さんったら!!陽菜ちゃんは特別なんじゃなかったのかしら。私、こんな陽菜ちゃんなんて見てられない」

「先輩……心配かけちゃってすみません。でも大丈夫です。岩崎さんだって、別に悪いことは何もしてません」

「でも、陽菜ちゃん……」

「私、自分の気持ちに素直になりたいって思ってるんです。でも、それが今は少し難しくて……
先輩、本当にどうしようもなくなった時は、話を聞いてくださいね」

「もちろんよ」




その日の夕方、廊下でまた坂田君に出くわした。

「陽菜、退社後は嫌だろうから、明日、ランチでも一緒に行こうよ」

「えっと……」

「陽菜、最近ため息ばかりついてるだろ。気分転換に連れてくよ。もちろん、奢るからさ」

「う、うん。ありがとう」

「よし、決まり!会社の近くにいいお店を見つけたから、連れてくよ。じゃあ、明日のランチタイムに迎えに行くわ」

「わかった」


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