Midnight Radio




ある日、たまたま学校に忘れ物をしたことに気付き、部活の友人と別れて学校に戻ったことがありました。



その日は課題がいつもよりも多くて早く帰りたかったので、気分が落ち込み気味でした。



息を切らして教室に入ると、誰かがいました。



……彼です。



「……あ、白沢さん。
どうしたの?忘れ物?」



そうやって聞く彼は、どこか焦っているようでした。



気のせいでしょうか。



「うん、携帯忘れちゃって」



心臓がうるさくて、顔も赤くなりそうで、何とか答えることしか出来ません。



本当は、もう少し話したいのに。



「もう暗くなっているから気をつけてね」



「ありがとう。
……和泉くんも、気をつけて」



「また明日」



その声をあとにわたしは学校を出ました。



電車の中で会話を反芻すると、気持ちが蘇ってきました。



ほんの少しとはいえ、あの彼と話をすることが出来たのです。



いつものわたしからしたら絶対にありえない事です。



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