Midnight Radio
「分かりました」
「和泉くんは、お大事にしてください。
白沢さんも、ありがとう」
「いえ」
「失礼します」
2人とも黙って教室に戻りました。
教室には、誰もいませんでした。
前にもこんなことがあったな、と思い出します。
「前にも、こんなことあったよね」
「うん」
忘れるはずがありません。
「良かった」
呼吸をするように囁きました。
何が良かったのでしょう。
夕焼けに彼の輪郭が溶けてなくなってしまいそうに儚い姿が、やけに綺麗に見えます。
「……今日はありがとう。
それと、ごめん」
「大丈夫だよ。
……でも、聞いていて驚いた。
和泉くんたちは、本当に仲が良さそうに見えていたから」
「俺も、今まではそう思っていた。
でも、俺だけだったんだってこの前初めて知った。
傷つくっていうより、何も考えられなかった」