Midnight Radio
外はとっくに日が暮れています。
それでも、なんとなく帰りたくなくて、黙って立ち尽くしていました。
「……帰る?」
「……そうだね」
何かを期待していた自分が途端に恥ずかしくなります。
急いで荷物を詰め込み、教室を出ます。
そこで、声を掛けられました。
「一緒に帰らない?
俺、白沢さんのお陰で立ち直れたし、お礼にあげたいものがあるんだ」
お礼にあげたいもの、というのも気になり、気付いたら頷いていました。
「……分かっ、た」
頷いたはいいものの、突然の急展開に、心が付いていけません。
最初は浮かれていました。
心地よい緊張感と、隣にいられる嬉しさと恥ずかしさが、いろいろ混じり合います。
そのうち、無言に無言が重なり、喋りにくくなってしまいました。
「お礼は、これ」
「何これ?」
「貝殻。桜貝って言うらしいよ」