Midnight Radio
わたしの母の話です。
母の名前は千鶴と言います。
小さな会社で働いており、そこで今の夫、すなわちわたしの父と結婚したそうです。
「千鶴さん、これ、お願いしていいですか?」
声の主を見ると、4年先輩の菅本さんだった。
このところ、忙しそうな彼は今日も書類を大量に抱えている。
「分かりました、いつまでに終わらせたら良いでしょうか?」
協力しない訳にはいかない、と気前の良い千鶴は意気込んだ。
「……次の、満月までにお願いします」
それが雅弘さんとの最初の会話だった。
千鶴は不思議な人だなあと思った。
「ふふふっ」
「え、僕、何かおかしかったですか?」
「そんな人、初めてだなって思ったんです。
月齢を気にする方、このご時世いらっしゃらないので」
「……すみません、面倒なことをしてしまって」
「大丈夫ですよ。
ほら、あそこのカレンダーに月齢が載っているので、それで見ます」