Midnight Radio
「……今日から、ちょうど12日ですね。
分かりました、それまでに仕上げておきます」
「ありがとう」
それ以後、彼に分からないことを聞く機会は増えた。
菅本さんは歳が近いために、同学年の同僚のいない千鶴にとっては最も話しやすい相手だった。
ある日、いつものように分からないところを菅本さんのもとへ持っていき、教えてもらっていると、なんの脈絡もなく腕に見とれていた。
菅本さんの腕ってわたしのものとは違うのね。
当たり前のことなのに、何故かそれが思い浮かんだ。
そして、すぐにその考えは打ち消したのに、じわじわと恥ずかしくなってきた。
「……で、ここを合わせて……
え、千鶴さん!顔赤いですよ?大丈夫ですか?
熱でもあるんですか?」
「……あ、ああ、大丈夫です。
ちょっとこのお部屋、暑いのかしら……」
恥ずかしさでとっさに顔を上げた。
すると、菅本さんはくすくすと笑っていた。
「今、秋ですよ?
もうすぐ冬ですし」
一杯食わされた。
「なんでもありません!」
それから教えてもらったけれど、全く千鶴の頭には入らないのだった。