蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「目覚ましは幾つもかけてるんですけど……」

「それが駄目なんだ。ひとつにしないから起きられないんだよ」


 ガミガミと根性論を説かれ、返す言葉もなくソファーの上で縮こまる。


「想像を絶する寝相を朝っぱらから見せられる立場になってみろ」

「えっ、私ってそんなに寝相が悪いんですか?」

「自分で言っただろうが」


 彼はお盆を持ち、呆れ顔で立ち上がった。


「可愛く眠ってるよ」


 そんな言葉とともにポンと頭のてっぺんを軽く叩かれた。足音はキッチンに向かって遠ざかっていく。


「食器は俺が片づけるから早く寝ろよ」

「…………」


 頭のてっぺんに手を当てたまま、私は茫然と座っていた。


 可愛く眠ってるよ。可愛く眠ってるよ。可愛く──。


 頭の中ではずっと彼の声がこだましている。
 嫌われたいのか、嫌われたくないのか。
 彼は私をどうしたいのか。相手の腹の中も自分の腹の中も見えない。

 この同棲はどこに向かっているのだろう?
 答えはやっぱり見つからない。


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