蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 カップ酒が空になり、二杯目のカップを開ける。今日は特別な日なのでハイペースだ。

イカゲソをちぎりながら考える。
 やりたいことってこれだけだったっけ? バブルバスと、カップ酒と……張り切っていた割にはなにかが足りない。

 しばらく考えた私は、この間彼が取引先から貰ったチョコレートがまだ冷蔵庫にあることを思い出して取りに行った。

 蓮司さんは甘いものはあまり好きではないのか、私が一日一粒食べるのを楽しみにしている以外、チョコレートはまったく減らない。
 数日前の彼を思い出す。


『好きな順で食べろよ。俺は取らないから』


 箱を前にどれにしようか真剣に迷う私を見て彼は笑っていた。
時折、彼のなんでもない言葉や表情が私の中のどこか深いところに刺さる。刺さったそれが抜けなくて困っているうちに、どんどん増えていってしまうのだ。

 そもそもどうして私は彼に嫌われなきゃいけないんだっけ?

 お風呂上がりで血行がいいせいか、カップ酒二杯で頭がぼんやりしてしまい、思考がまとまらない。
 溜息をついてチョコレートの箱に蓋をした私は、ふと箱の横に書かれた文字に目を留めた。


(帝塚山……?)


 大阪の地名だ。どこのブランドのチョコレートかなど、これまであまり気にしていなかったけれど、それが大阪のチョコレートショップのものだと今初めて気づいた。
 大阪といえば綾瀬家を連想してしまう。綾瀬家は橘ホテルグループに占める白川花壇のシェアを切り崩すため、盛んに攻勢をかけている。今日、蓮司さんが出張しているのも大阪だ。なにか関連はあるのだろうか?

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