蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「ならばなぜ、花卉販売業のままでいなかったのですか?」

「それは……」


一瞬ひるんだ私を見て彼はかすかに笑い、手元の資料をめくった。


「失礼ながら、白川花壇の最近の業績は下降に歯止めがかからない状況だとお見受けしています。あらためてお訊きします。本当の目的は?」

「…………」


 嫌味ったらしく「志望動機」から「本当の目的」に表現を変えられた時点で、ああもうこの面接は駄目だなと悟った。なにか適当な返答でこの場を取り繕って退出しようと思ったときだった。


「ご気分を害されたなら申し訳ありません。私の職務は、社にたかるいろいろな思惑から社を守ることも含まれるので」


それを聞いた私はすっくと立ち上がった。
たかる、ですって?
図星ではあったけれど、あまりの無礼さに激怒していた。
申し訳ありません、ですって?
謝る気のない謝罪文句ほど不愉快なものはない。


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