蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
結局その日に私たちが出勤したのは定刻を三時間も過ぎたお昼近くだった。
蓮司さんは男を駅員に突き出すだけでなく、男が警察に引き渡されて私が状況の聴取を終えるまで、すべての手続きに付き添ってくれた。
その過程で蓮司さんは普段の落ち着き払った彼とは打って変わって怒りをあらわにする場面があった。身体のどこを触られたのか、私が事細かに聞かれたときだ。
「失礼ですが、女性警官に交代してもらえませんか?」
実際の立ち位置を再現させられた際、彼のクレームで担当が変えられたのは有り難かった。正直、思い出すだけで吐き気がしていた。
また、こういう場合は被害者である女性側が相手を挑発するような服装かどうかも問題とされるらしく、私は全身の写真を撮られる羽目になった。
正面を向いて一枚、横向きで一枚、うしろ向きで一枚。シャッターが切られるたび、こんな画像データが警察に保管されることがまるで犯罪者のようで悔しくてならなかった。私の知らない場で、知らない男たちに、女性の身体という観点で審議されることも。