蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
実際、あのときのキスが現実だったのかはいまだにわからない。翌日に起きた変質者事件で吹っ飛んでしまったのだ。あれから一週間が過ぎ、今では私たちは毎朝一緒に出勤するようになった。
彼と一緒に電車に乗ると、それまでよりずっと会社が近くなったように感じられる。
ひどい混雑時、ふと気づくと彼は私が押されないようにさりげなく盾になってくれている。新宿駅の濁流のような人の流れを横切るときも、今までとなにが違うのか、すいすいと歩くことができた。守られるってこんな感じなのかと、砂漠のサボテンだった私はしばし綺麗なお花なったような気分を味わった。
同時に少しだけ不安になる。
守られる幸せを知ることが怖かった。そこから抜け出せなくなる予感が怖かった。失うものなどなかったのに、そんな自分が過去になっていく予感が怖かった。これは破談にするまでの仮想ゲームなのに、それを忘れてしまいそうな自分が怖かった。
「おい。早くなにか希望を言え」
まあ彼がこの態度だから、しょっちゅう正しい現実に立ち返ることができるのだけど。
彼と一緒に電車に乗ると、それまでよりずっと会社が近くなったように感じられる。
ひどい混雑時、ふと気づくと彼は私が押されないようにさりげなく盾になってくれている。新宿駅の濁流のような人の流れを横切るときも、今までとなにが違うのか、すいすいと歩くことができた。守られるってこんな感じなのかと、砂漠のサボテンだった私はしばし綺麗なお花なったような気分を味わった。
同時に少しだけ不安になる。
守られる幸せを知ることが怖かった。そこから抜け出せなくなる予感が怖かった。失うものなどなかったのに、そんな自分が過去になっていく予感が怖かった。これは破談にするまでの仮想ゲームなのに、それを忘れてしまいそうな自分が怖かった。
「おい。早くなにか希望を言え」
まあ彼がこの態度だから、しょっちゅう正しい現実に立ち返ることができるのだけど。