蜜愛婚～極上御曹司とのお見合い事情～

「白川家のご両親は厳しかったのか？」

「はい。特に母が公共の温泉を好まなかったので、大学に入るまでは行ったことがありませんでした。でも大学時代にバイト仲間と銭湯に行ってから気に入っちゃって、こっそり通ってました」

「バイト仲間と銭湯って、いったいどんな怪しいバイトをやってたんだ？」

「いたたた……力が強すぎます。あと、もうちょっと下。あ、行きすぎ」


　好き勝手にオーダーすると、背後から不穏な空気が漂ってきた。四年前、面接試験で対峙したときのことを思うと、今こうして肩を揉ませていることがおかしくなる。


「なにがおかしい」

「いえ」


　慌てて笑いを引っ込め、団扇で首筋を扇いだ。緩いアップにした髪から後れ毛が落ち、ふわふわと首筋をくすぐった。