蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 うっとりしていると、突然頭のうしろを小突かれた。


「ほら、終わりだ」

「えー、もう?」


 私が不満気にうしろを向くと、彼は自分の肩をさすりながら壁の時計を指さした。


「時計を見てみろ。三十分以上やったぞ」

「わ、本当だ」


 時刻は夕方七時。開け放った窓から見える空はもう日が沈み、西の空にまだ少しだけ茜色が残っている。散策も温泉も夕飯も全部終わってしまい、あとは帰るだけだ。でもまだ帰りたくない。


「蓮司さんは今から運転だから、次は私がマッサージしてあげます」

「いいよ。俺は肩が凝らないから」

「じゃあ、お茶かコーヒーを買ってきてあげます」

「どうせ自分がコーヒー牛乳飲みたいんだろ?」

「えへへ、そうですけど。温泉でやり残したのはあれだけだし。蓮司さんはなにがいいですか?」

 私がお財布を持って立ち上がろうとすると、彼が腕を掴んで止めた。


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