蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
ホテル事業統括部の部屋に入ると、正面奥にあるガラス張りのミーティングルームで蓮司さんと橘部長が向かい合っているのが見えた。ふたりとも腕組みをしていて、ともに厳しい顔だ。
部屋に入る前に大きくひとつ深呼吸をする。
「失礼いたします」
「白川さん、急に呼んで悪かったね」
私が入っていくと、腕組みを解いた橘部長が笑顔を見せ、自分の隣の席を勧めた。橘部長が直属の上司なので、当然そういう席になるだろう。
橘部長の隣の席に着き、視線を上げて正面の蓮司さんを見る。それだけで私の心拍は上がってしまう。同じスーツ姿でも、会社で見る彼と家で見る彼とは纏っている空気が違うのだ。
「鷹取部長から新規イベントの話があったんだけどね」
橘部長が隣から優しい声で切り出した。
「六月の第四週、四日間連続で綾瀬花音さんのトークイベントが入ったんだ。フラワーアレンジメントの実演とランチがセットになった形で」
前に橘部長から知らされていたから、私はまったく驚くことなく頷いた。私の横顔に蓮司さんの視線が注がれているのがわかる。
「知っていたのか?」
「いえ……」
蓮司さんに問われ、咄嗟に否定した私は、一度蓮司さんに向けた視線を少し迷って橘部長に戻した。まだオフレコなのだから、私がすでに知っているのは好ましくないはずだ。
部屋に入る前に大きくひとつ深呼吸をする。
「失礼いたします」
「白川さん、急に呼んで悪かったね」
私が入っていくと、腕組みを解いた橘部長が笑顔を見せ、自分の隣の席を勧めた。橘部長が直属の上司なので、当然そういう席になるだろう。
橘部長の隣の席に着き、視線を上げて正面の蓮司さんを見る。それだけで私の心拍は上がってしまう。同じスーツ姿でも、会社で見る彼と家で見る彼とは纏っている空気が違うのだ。
「鷹取部長から新規イベントの話があったんだけどね」
橘部長が隣から優しい声で切り出した。
「六月の第四週、四日間連続で綾瀬花音さんのトークイベントが入ったんだ。フラワーアレンジメントの実演とランチがセットになった形で」
前に橘部長から知らされていたから、私はまったく驚くことなく頷いた。私の横顔に蓮司さんの視線が注がれているのがわかる。
「知っていたのか?」
「いえ……」
蓮司さんに問われ、咄嗟に否定した私は、一度蓮司さんに向けた視線を少し迷って橘部長に戻した。まだオフレコなのだから、私がすでに知っているのは好ましくないはずだ。