蜜愛婚～極上御曹司とのお見合い事情～
「前に僕から少し話したんです」


　言い訳をするように橘部長が蓮司さんに告げる。でもその声には非難めいた雰囲気がかすかに混じっていた。私が白川花壇の人間であることは仕事に関係ないとはいえ、橘部長は蓮司さんのビジネス一徹の姿勢に言いたいことがあるのだろう。


「彼女は経営者一族の出身です。経営に関する常識をしっかり持った人ですから」

「それはわかっています」


　橘部長の言葉に蓮司さんが短く答える。


「あの……白川側には一切言っておりません。オープンになるまでは守秘義務がありますので」


　間に挟まれた私は申し訳なくなり、横から言い添えた。白川の私が図々しく入社しなければ、こんな気を遣わせることはなかったはずだ。


「どこまで橘部長から聞いているかは知らないが」


　蓮司さんは仕切り直すように大きく溜息をつき、話を再開した。


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