蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
雰囲気も内容も息の詰まるような打ち合わせを終え、橘部長とホテル統括事業部の部屋を出る。
「応援するとは言ったけど、やっぱり心配だな。鷹取部長も酷だよ」
廊下を歩きながら橘部長が本音を漏らした。
蓮司さんとは雰囲気も仕事のスタンスも対照的な人だ。橘部長のことは部下想いの優しい上司として信頼している。そして蓮司さんのことも、仕事に徹する厳しい姿勢が魅力的だと思う。家にいるときに見せる彼の素の姿との微妙なギャップがまたたまらないのだ。
「大丈夫です。ホテルの名誉にかけて、付け入れられないようしっかりやります」
「そうだけど、女って怖いからね」
妙にプライベートの実感がこもったようなコメントに思わず吹き出した。
「まるでなにか経験あるみたいですよ」
「まあね」
打ち合わせの緊張から解放されたせいで、普段より笑い上戸になってしまう。ふたりで笑っていると背後から急ぎ足の足音が近づいてきたので、私は笑いながら橘部長の背後に下がり、廊下の片側を空けた。
「失礼」
それは蓮司さんの声だった。涼やかな香りの風とともに、濃い紺色のスーツが追い越していく、先ほどはシャツ姿だったけれど今は上着を着ていて、手には鞄を持っている。今から外出なのだろう。
でも今夜はご飯がいる日。私は少し胸を躍らせてその背中を見送った。
「応援するとは言ったけど、やっぱり心配だな。鷹取部長も酷だよ」
廊下を歩きながら橘部長が本音を漏らした。
蓮司さんとは雰囲気も仕事のスタンスも対照的な人だ。橘部長のことは部下想いの優しい上司として信頼している。そして蓮司さんのことも、仕事に徹する厳しい姿勢が魅力的だと思う。家にいるときに見せる彼の素の姿との微妙なギャップがまたたまらないのだ。
「大丈夫です。ホテルの名誉にかけて、付け入れられないようしっかりやります」
「そうだけど、女って怖いからね」
妙にプライベートの実感がこもったようなコメントに思わず吹き出した。
「まるでなにか経験あるみたいですよ」
「まあね」
打ち合わせの緊張から解放されたせいで、普段より笑い上戸になってしまう。ふたりで笑っていると背後から急ぎ足の足音が近づいてきたので、私は笑いながら橘部長の背後に下がり、廊下の片側を空けた。
「失礼」
それは蓮司さんの声だった。涼やかな香りの風とともに、濃い紺色のスーツが追い越していく、先ほどはシャツ姿だったけれど今は上着を着ていて、手には鞄を持っている。今から外出なのだろう。
でも今夜はご飯がいる日。私は少し胸を躍らせてその背中を見送った。