蜜愛婚～極上御曹司とのお見合い事情～

　自分を窘めつつ、私は笑顔で歩み出た。


「このたびのイベントで担当を務めさせていただく白川乃梨子と申します。どうぞよろしくお願いいたします」


　綾瀬花音の目が一瞬のうちに私の全身を査定したのがわかった。その目に浮かぶ敵意は一瞬ののち、小馬鹿にしたような笑みに変わった。
　まあ馬鹿にされて当然といえば当然だ。ホテルマンとしての私の服装は他人に勝つことを目的にしていない。だから腹も立たないし、服装がどうあれ、顔立ちや若さの点でも負けていることは認めよう。

　けれど笑顔でお辞儀をした私が顔を上げたとき、私が見たものは綾瀬花音の背中だった。


「鷹取部長。このあとお時間をいただけますか？」


　彼女は蓮司さんに話しかけている最中だった。
　返事もなく、お辞儀の途中で背中を向けるとは……。無礼な仕打ちにぐっと耐える。

　しかし、笑顔を保った私にさらなる攻撃が加えられた、