蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「綾瀬花音、超綺麗」
「写メ撮りたかったなぁ」
「すごーい、サインがついてる」
営業企画部の面々がフラワーボックスを囲んで騒いでいるので私も見に行った。
花には旬や季節だけでなく、流行というものがある。それは花卉販売会社や種苗会社が仕掛けていることが多いのだけど、綾瀬花音の作品にもしっかりと流行が反映されていた。
可愛らしさと華やかさを箱いっぱいに詰めた作品には彼女の写真入りのメッセージカードが添えてあり、そこに彼女のサインが書き記してある。署名ではなく、芸能人のような、ちょっと読めないやつだ。
「なるほど……」
たった五分の出来事とは思えないほどの疲労を感じながら、私は妙に納得して呟いた。
ずっと前から綾瀬花音の作品にどこか引っかかるものを感じていた。どこにもケチをつけることができない完璧な作品なのに、なぜなのか理由がわからなかった。
でも今日、わかったことがひとつある、彼女には花に対する愛がない。花は彼女を引き立てる小道具なのだ。
「嫌な仕事になりそう……」
自分の席に帰り、捨てろと言われた花を慰める。彼女はこの花を私が生けたと知っていて私に捨てろと命令したのだろう。頭を抱え、私は溜息をついた。
「写メ撮りたかったなぁ」
「すごーい、サインがついてる」
営業企画部の面々がフラワーボックスを囲んで騒いでいるので私も見に行った。
花には旬や季節だけでなく、流行というものがある。それは花卉販売会社や種苗会社が仕掛けていることが多いのだけど、綾瀬花音の作品にもしっかりと流行が反映されていた。
可愛らしさと華やかさを箱いっぱいに詰めた作品には彼女の写真入りのメッセージカードが添えてあり、そこに彼女のサインが書き記してある。署名ではなく、芸能人のような、ちょっと読めないやつだ。
「なるほど……」
たった五分の出来事とは思えないほどの疲労を感じながら、私は妙に納得して呟いた。
ずっと前から綾瀬花音の作品にどこか引っかかるものを感じていた。どこにもケチをつけることができない完璧な作品なのに、なぜなのか理由がわからなかった。
でも今日、わかったことがひとつある、彼女には花に対する愛がない。花は彼女を引き立てる小道具なのだ。
「嫌な仕事になりそう……」
自分の席に帰り、捨てろと言われた花を慰める。彼女はこの花を私が生けたと知っていて私に捨てろと命令したのだろう。頭を抱え、私は溜息をついた。