蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
***

 実家の母から電話があったのは、その日の夜だった。

 昼間の出来事を思い出してむしゃくしゃしていた私は、リビングで蓮司さんの帰りを今か今かと待ち受けていた。彼が自宅で仕事の話をしたくないのは感じているけれど、今日だけは恨み言のひとつも言わせてもらいたかった。


「遅いなぁ……」


 彼から連絡はないかとスマートフォンを握り締めていた私は突然鳴り響いた着信音に飛び上がった。画面には母の名前。

 母は私と蓮司さんの一刻も早い婚約を待ち望んでいるので、普段はふたりの時間を邪魔しないようにと電話は控えてメッセージを送りつけてくる。だいたいが「まだなの?」「早くしなさい」という催促だ。だから電話の着信で母の名前が表示されたとき、ただごとではないなという悪い予感はあった。



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