蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「もしもし。お母さん、どうしたの?」
『乃梨子? 今話していてもいいかしら?』
母の声にはどことなく元気がない。でも私の都合を訊くということは緊急事態ではないということだからとりあえずほっとして、私はスマートフォンを持って自分の部屋に入った。
「大丈夫よ。蓮司さんはまだ帰ってきてないから」
『帰りが遅い方なのね』
「そうなの、だからなかなかゆっくり将来の話ができないのよ」
話の流れを利用して、すかさず言い訳をする。このときの私は、まさかこの電話が私にとってとても辛い決断を促すものだとは知らなかった。
「で、何かあったの?」
『実はね、三日ほど前なんだけど、お父さんが救急車で運ばれたのよ。今もまだ入院してるの』
「ええっ?」
母によると、父は若い頃に一度気胸で倒れたことがあり、それ以来、肺が十分に機能していなかったらしい。それなのに父は母や医師がいくら言っても喫煙をやめなかった。父は人付き合いがよく、取引先と毎晩飲み歩いているような人だ。酒と煙草を取り上げることはなかなかできなかった。
『乃梨子? 今話していてもいいかしら?』
母の声にはどことなく元気がない。でも私の都合を訊くということは緊急事態ではないということだからとりあえずほっとして、私はスマートフォンを持って自分の部屋に入った。
「大丈夫よ。蓮司さんはまだ帰ってきてないから」
『帰りが遅い方なのね』
「そうなの、だからなかなかゆっくり将来の話ができないのよ」
話の流れを利用して、すかさず言い訳をする。このときの私は、まさかこの電話が私にとってとても辛い決断を促すものだとは知らなかった。
「で、何かあったの?」
『実はね、三日ほど前なんだけど、お父さんが救急車で運ばれたのよ。今もまだ入院してるの』
「ええっ?」
母によると、父は若い頃に一度気胸で倒れたことがあり、それ以来、肺が十分に機能していなかったらしい。それなのに父は母や医師がいくら言っても喫煙をやめなかった。父は人付き合いがよく、取引先と毎晩飲み歩いているような人だ。酒と煙草を取り上げることはなかなかできなかった。