蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「おかえりなさい」
部屋を出て彼を迎える。母の電話を受けるまでは、綾瀬花音のことでいっぱいだった。
いくら仕事は選べないといっても、白川との因縁を持つうえにあの性格の彼女に仕えなければならないなんて、まるでなにかの罰ゲームだ。蓮司さんならブーケ・ダンジュを追い返すこともできたはずだし、橘部長が言っていたように私を担当につけないよう説得することもできたはずだ。そんな不満を少しぐらいはぶつけてもいいかなと思っていた。
でも今は降りかかってきた事態が大きすぎて頭が混乱したままで、むやみに喋るとあとで後悔するようなことを口走ってしまう気がした。
「なにかあったのか?」
スーツを脱いでいた蓮司さんはふと眉を寄せる。
彼の顔を見ながら一瞬言葉に詰まる。彼にはすべてを素直に打ち明けたいのに、喉に詰まる塊が大きすぎて吐き出せない。そんな感じだった。
「ううん」
同棲を始めて以来、相手の腹を探りながらいろんな小競り合いをしてきたけれど、今の私は一番上手に作り笑いを浮かべていると思う。素直になりたいと切実に願っているときほど、嘘が上手になるのはなぜだろう?
言いたくても言えない恋慕が胸に詰まって、少し苦しかった。
部屋を出て彼を迎える。母の電話を受けるまでは、綾瀬花音のことでいっぱいだった。
いくら仕事は選べないといっても、白川との因縁を持つうえにあの性格の彼女に仕えなければならないなんて、まるでなにかの罰ゲームだ。蓮司さんならブーケ・ダンジュを追い返すこともできたはずだし、橘部長が言っていたように私を担当につけないよう説得することもできたはずだ。そんな不満を少しぐらいはぶつけてもいいかなと思っていた。
でも今は降りかかってきた事態が大きすぎて頭が混乱したままで、むやみに喋るとあとで後悔するようなことを口走ってしまう気がした。
「なにかあったのか?」
スーツを脱いでいた蓮司さんはふと眉を寄せる。
彼の顔を見ながら一瞬言葉に詰まる。彼にはすべてを素直に打ち明けたいのに、喉に詰まる塊が大きすぎて吐き出せない。そんな感じだった。
「ううん」
同棲を始めて以来、相手の腹を探りながらいろんな小競り合いをしてきたけれど、今の私は一番上手に作り笑いを浮かべていると思う。素直になりたいと切実に願っているときほど、嘘が上手になるのはなぜだろう?
言いたくても言えない恋慕が胸に詰まって、少し苦しかった。