蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「私って、信用ないんですね」


 苦笑交じりに膝の上でハンカチをいじる。
 出会いが出会いだから、まあ当然と言えばそうだ。でも男女の仲にはなれなくても同棲して多少は打ち解けたと思っていたのに、彼がそんなに大事なことを私に告げないのは、やはりこれ以上深めるつもりもない短期の関係だという認識なのだろう。失恋と落胆がごっちゃになって押し寄せてくる。


「いずれ言うつもりなのかもしれないし、社長との血縁関係は彼にとって重要でないのかもしれないよ。だからそんなに気落ちしないで」


 橘部長は俯いてしまった私の肩に手を置き、励ますようにポンポンと軽く叩いた。


「いえ……。成り行き上、形だけ同棲してますけど、実際は同居人みたいなもので。言ってくれないからって恨める立場じゃ……」


 そのとき、突然ドアが開いた。
 振り向いた私たちの背後の入口には、ファイルを脇に抱えた蓮司さんが驚いた表情で立っていた。


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