蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「まだあるんだよ。全部読み上げると白川さんの胃に悪そうだから、まああとでこれ読んで見積書と計画書を修正してくれる?」

「わかりました」


 そういう手段で来られたら、どれだけ気をつけても防ぎようがない。


「綾瀬さんは楽しみにしてくれているファンのみなさんのために絶対にこのイベントを成功させたいのに、これでは不安だと涙ぐんでいたらしい」

「……橘部長」


 私は両手を前に出し、それ以上言わないでと部長を制止した。
 涙ぐんでいた、って? これ以上彼女を嫌いになりたくない。


「白川さんが故意に装備を抜くはずがないってことは、少し鷹取部長に言ったんだけどね。いかんせん自分の部下だから、過度に庇う訳にもいかなくてね。申し訳ない」


「わかりました。すぐに修正をかけて、鷹取部長のところに謝罪に行きます。先方にも直接お伺いします」


 元々完璧に作りあげていた見積案があるから、修正など大した手間ではない。立場上、私を庇えない橘部長にも頼るまい。


 装備を抜くという橘部長の言葉にも私は腹を立てていた。
 抜くどころか、なにも考えていない相手に代わり、すべてこちらが提案した。故意に抜いたのはあちらだ。
客としての立場を利用して私を貶める彼女の腹黒さにぞっとする。
どうして周囲は気づいてくれないの?


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