蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
第四章
対決と成功と彼がいない夜
イベントの初日は大成功だった。
やはり彼女にはスター性があるのだなと、見ていてつくづく感心してしまう。私に見せるあの腹黒さは微塵も感じさせず、天使のような笑顔と華のある話術で会場の女性客たちはすっかり魅了されている。
「さすがだね」
「本当に」
コース料理を終えお土産も配り終えた私は最後の挨拶をする壇上の彼女を眺めながら橘部長と短い会話を交わし、うなずき合った。
彼女は自分に似合う色をよく理解していて、打ち合わせでもだいたい白かバーミリオン系の赤い服を着ていた。今日もバーミリオンの服で、彼女が生けた花よりも華やかに目立っている。花は二の次であっても喜ぶ客が大勢いるなら、これはこれでいいのかもしれない。彼女の人気を見ていると、素直にそう認められた。
初日に続き二日目もなんの問題もなく終了した。三日目からは後半戦で、外国人向けに日本文化のPRを行う目的のため、前半とはまったく異なる試みになる。彼女は外国人相手なら前半より簡単だと豪語していて、綾瀬側はほぼイベントを終えたような祝賀ムードだった。でも私は悪い予感を抱いていた。
それはやはり的中した。後半戦の初日終了時、共同で開催している茶道の家元からクレームがついたのだ。綾瀬花音がお茶花というものをまったく理解していないというものだった。