蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
箱の外側に書いてある「白川花壇」の文字を見て不服そうに唇を歪めたあと、彼女は箱の中を覗いた。
「……何よこれ?」
「えっ?」
「こんな、そこらへんで抜いてきたような雑草を。私に恥をかかせたいの?」
「こちらはお茶花として喜ばれるものだと思いますが」
「じゃあ、そう言うあなたがやりなさいよ。なんなの? あのおばさん、ほんと面倒臭い」
もはや私に対する怒りというより、家元やらなにやらいろんなものに腹を立てているらしく、見ていて滑稽で笑いたくなってしまった。
「では、茶道会場は私が代理で生けるということでよろしいでしょうか?」
もうこれ以上綾瀬花音に関わっている時間はない。返事がないのは承諾だとみなし、急いで茶道会場まで移動する。
「たいへん遅くなり、申し訳ございません。こちらの花材が先ほど届きましたので」
控室でお弟子さんたちと談笑していた家元はゆったりと立ち上がり、入口のワゴンのところまでやってきた。
箱を開けて花材を見る前に、彼女は白川花壇の社名に目を留め、おや、という表情を浮かべた。そして彼女はにっこりと微笑んだ。
「今回は大丈夫ね。箱を見ればわかります」
朝から走り回っていたせいか、私はわっと泣き出したい気分に襲われた。こんなの、不意討ちだ。白川花壇のことを今もこんな風に信じてくれる人がいるなんて。
「……何よこれ?」
「えっ?」
「こんな、そこらへんで抜いてきたような雑草を。私に恥をかかせたいの?」
「こちらはお茶花として喜ばれるものだと思いますが」
「じゃあ、そう言うあなたがやりなさいよ。なんなの? あのおばさん、ほんと面倒臭い」
もはや私に対する怒りというより、家元やらなにやらいろんなものに腹を立てているらしく、見ていて滑稽で笑いたくなってしまった。
「では、茶道会場は私が代理で生けるということでよろしいでしょうか?」
もうこれ以上綾瀬花音に関わっている時間はない。返事がないのは承諾だとみなし、急いで茶道会場まで移動する。
「たいへん遅くなり、申し訳ございません。こちらの花材が先ほど届きましたので」
控室でお弟子さんたちと談笑していた家元はゆったりと立ち上がり、入口のワゴンのところまでやってきた。
箱を開けて花材を見る前に、彼女は白川花壇の社名に目を留め、おや、という表情を浮かべた。そして彼女はにっこりと微笑んだ。
「今回は大丈夫ね。箱を見ればわかります」
朝から走り回っていたせいか、私はわっと泣き出したい気分に襲われた。こんなの、不意討ちだ。白川花壇のことを今もこんな風に信じてくれる人がいるなんて。